日本・中国・韓国子ども童話交流事業 日本語 中国語 韓国語
童話コラム
  1000年の時を越えて  
  宮沢賢治研究家 牧野 立雄  
 

 2005年の夏のことです。日中韓子ども童話交流に参加したことがきっかけになって和歌山県にある 高野山 ( こうやさん ) の夏季大学で宮沢賢治の話をする幸運に恵まれました。そのとき高野山 霊宝館 ( れいほうかん ) で紺色の紙に金字と銀字で一行ずつ交互に書いた国宝の「 金銀字一切経 ( きんぎんじいっさいきょう ) 」を見て深い感動をおぼえました。あとでいろいろ調べたら、この国宝は別名を「 清衡経 ( きよひらきょう ) 」と言い、今から900年ほど前に 藤原清衡 ( ふじわら きよひら ) という人が、この世に「 抜苦与楽 ( ばっくよらく:苦しみを抜き楽しみを与える ) 」の理想郷を建設したいと願って中国から輸入した「 宋版一切経 ( そうばんいっさいきょう ) 」をおおぜいの僧侶に写経させ、10年の歳月をかけて制作したものでした。
 平泉は宮沢賢治のふるさと岩手県の南部にある美しい町で、藤原清衡は彼が尊敬するふるさとの偉人です。宮沢賢治は、どうすれば「世界がぜんたい幸福に」なれるかと考え、「われらは世界のまことの幸福を索( たず )ねよう」と呼びかけました。それが、はるかな時を越えて「抜苦与楽」という願いと響きあっていることが分かったのです。
 そして、この響きをたどって行くと、今から1200年ほど前に中国の長安で修行して日本に新しい文化の息吹を伝え高野山を開いた 弘法大師 ( こうぼうだいし ) や『西遊記』で有名な 三蔵法師 ( さんぞうほうし ) に出会い、さらにその前に朝鮮半島を経て「 高麗版一切経 ( こうらいばんいっさいきょう ) 」が日本に伝わって仏教文化の基礎ができたことが分かります。私たちの交流は、こういう1000年の時を越えた交流でもあるのです。このホームページで是非みなさんの新しい旅や夢を聞かせてください。

 
 
第1回(2006年3月24日)「行ッテ」の精神
第2回(2006年3月27日)「汗と気づきは成功の大法則」
第3回(2006年3月29日)「1000年の時を越えて」
 
  <<戻る  
  このページの上へ